松生春二(阿部寛)は包丁を一心不乱に研いでいた。 袋に包丁を入れ、自転車で向かった先は、病院だった。 そこに寝ているのは、大島に駆け落ちして結婚した艶という女だった。 松生は病室に入るや否や、持ってきた包丁で寝ている艶を刺そうとしたのだが…
松生はできなかった。 そこに入ってきたのは、病院の看護師の芳泉杏子(田畑智子)だった。
「先生がお話があるのですが」 と言いかけると直ちに松生は 「聞きたくない!」 そう言い放って出ていくのだった。
松生は家に帰ると、艶の昔の写真や、手紙を漁り始めた。 そして石田行彦(羽場裕一)の連絡先を知ろうと連絡をするのだった。 ようやく、電話番号を聞くと松生は石田の家に電話をかけた。 電話を取ったのは妻の環希(小泉今日子)だった。
彼女は松生の事は知らなかった。 行彦は奪い取るように電話を取ると、松生は艶が危篤と言うことを知らせた。 そしてもう一つ、行彦が昔まだ艶が12歳だった時に犯した行為を言うのだった。
その日、石田家は電話を待っていたのだった。 石田の小説がある賞を受賞しそうだったからでその電話を待ち焦がれていたのである。
行彦が受賞の取材を受けているときに、行彦の愛人で作家の伝馬愛子(荻野目慶子)が窓の外を通った。 彼女は、今回の小説は、自分の艶にしたことを赤裸々に描いていたのを知っていた。 そして同じ時、妻の環希は着信履歴から松生に連絡を取るのだった・・・
劇場公開の時は時間が合わず行けませんでしたが、やっと見れました。 見るまであまり情報を入れなかったので、想像していた物とは全く違う話でしたね。 華やかで豪華な女優陣、阿部寛とくれば、阿部ちゃんを取り囲む綺麗所と思いがちですよね。
全く違いました。
艶と言う女性はもう病魔に侵され、ほとんど死を待つのみで意識もありません。 冒頭部は普通に見れば、そんな妻を解放してやりたい夫の行動ととれますが、阿部寛の表情は違うことを指しています。 そしてだんだん艶と言う女の生き方、怖さ、自由奔放さが描かれていきます。
行定監督は好みがはっきり分かれる監督のようですが、私は 「クローズド・ノート」 http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/4548124.html が結構好きでした。 結構肌の合う方の監督だと思います。
この作品では、物語の中心の艶は、シークレットになっています。 病院のベッドで寝ている艶の顔が映ることはありません。 逆にだからこそ、艶と言う女性に対して想像が膨らみ、物語が膨らんでいくんですね。
さらに贅沢なほどの女優陣が、個性をぶつけ合っているようなそんな感じさえもしました。 全体に漂う陰鬱さもありますが、何か惹かれる作品でした。
ひたすら自転車で病院を目指す松生、妻が入院している
松の娘と安藤
松生は家族を捨てていた
松生の元妻と娘
環希と愛子の修羅場