anttiorbの映画、映像の世界

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かぞくのくに

2012年作品、ヤン・ヨンヒ監督、安藤サクラ主演。
 
東京の足立区で喫茶店をしている家族がいる。 母(宮崎美子)がやっているが、そこに知らせが入る。 兄・ソンホ(井浦新)が帰ってくるという知らせだ。 
非公式の帰国ということで、成田空港の通常の出口とは違うところで待つように指示があった。 父(津嘉山正種)と叔父(諏訪太朗)、そして妹のリエ(安藤サクラ)がついて行った。
今回はソンホだけでなく、日本での病気の治療のためということで、3か月の特別帰国ということで、数家族が別室で待っていて、そこにソンホも現れた。 25年ぶりの日本の地だった。
なんといってもリエが一番喜んでいた。 しかし監視役(ヤン・イクチュン)を同行させることを言い渡された。 彼が今後ぴったりと、ソンホたちと一緒にいるということだ。
車で家に向かうソンホ。 もう少しで家というところで、彼は車から降りた。 すぐ先に商店街があった。 そのアーケードを抜けると懐かしい喫茶店があり、そこに一人の女性が立っていた。 息子の帰りを待っていた母であった。 
待ちに待った息子の帰還に涙する母。 しかし、監視役のヤン同志から、早くも注意点を言われた。 許可なく東京から出てはいけない。 ヤン同志は、必ず近くで監視をするということだった。
25年前16歳だったソンホは、祖国への帰還事業の一員として、北朝鮮に渡った、いや帰ったのであった。 帰還事業とは1950年代から1984年にかけて行なわれた在日朝鮮人とその家族による日本から朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮)への集団的な永住帰国あるいは移住のことである。 家族から行ったのはソンホだけだった。 そして彼は北朝鮮で結婚をして、子供までいた。 今回彼が帰ってきた理由は、脳腫瘍の治療ということだった。 
5年前に脳に腫瘍らしきものが発見され、北朝鮮での治療は困難とされた。 しかしそこから5年、やっと許可が下り日本で治療を行うことが決まったのである。 しかしヤン同志は、ソンホに二人だけでいうのであった。 「あの話を忘れるな」 いったいあの話とはなんなのか?…
 
これは見たい作品でしたので、今回ギンレイホールでの上映は本当に感謝です。 ヤン・ヨンヒ監督でしか描けない作品だとまず思いました。 
3人の兄が、帰還事業で北朝鮮に渡り、この作品中のリエは監督自身の分身なんですね。 こういう作品を見てしまうと、いったい誰が悪いのかという犯人探しをしてしまう、悪い癖が出てしまいます。 また在日問題という、今も正直存在することに関して、表に現れないところを深く表現した秀作でした。
この作品中ソンホはほとんど笑顔を見せません。 また少し笑っても表情がないんですね。 リエがいるときだけちらっと見せる笑顔がなんか寂しいんです。 南北に分かれた朝鮮半島、また日本との関わり合い。近くて深い問題を実体験からストレートに描いている衝撃作でした(G)
 
「北では考えることをしてはいけないんだ。思考停止をするんだ。ただ一つ考えることは、いかにして生き抜いていくかそれだけだ。」  最後にソンホがリエに言うセリフが重かったです。



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兄が帰ってくる、その知らせを受け喜ぶ父、母、そしてリエ

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25年ぶりの帰国を喜ぶかぞく

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ささやかな同窓会に行くソンホ達

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しかし必ず近くにいるヤン

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兄との再会を喜ぶ妹だったが

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衝撃的なことを兄に言われ、不満をヤンにぶつけるリエだが

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