anttiorbの映画、映像の世界

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孤高のメス

2010年作品、成島出監督、堤真一夏川結衣成宮寛貴出演。
 
母が亡くなった。 葬儀と荷物の整理のため実家に帰ってきた中村弘平(成宮寛貴)は何かとお世話になった小学校教師・静(余貴美子)と思い出話をしていた。 母は最期ちょっとかわいそうな最期だった。 母の一生はついていない物だったんじゃないか、そう弘平は思っていた。 ふと遺品の整理をしていると母の昔の日記が出てきた。 それは弘平が初めて知る母の若いころの記録だった。 まだ弘平が小さいころの…
1989年、浪子(夏川結衣)が勤めるさざなみ市民病院は、大学病院に依存し、外科手術ひとつまともにできない地方病院だった。 外科医長・野本(生瀬勝久)のオペは荒く、手際が悪かった。 そのくせ、威張り散らし最悪の環境だった。 
始末が悪いのは手に負えなくなると大学病院に患者を送ってしまうのだった。 そしてまだ小さい息子を、夜遅く迎えに行く。 家に帰って弘平を寝かせると、日記に愚痴を書く。 そんな毎日だった。
そこに、ピッツバーグ大学で肝臓移植も手掛けた当麻鉄彦(堤真一)がやって来た。 始め浪子は、当麻に医療器材の扱いに注意を受けた。 しかしいきなり知らない男から文句を言われた彼女は不快な顔を見せたが、彼が明日からこの病院で働く医師とは初めて聞いた。 
そして着任早々の緊急オペにも、正確かつ鮮やかな手際で淡々と対応する当麻。 あまりの手際の良さに、驚嘆する若い医師たち、そして浪子をはじめとする看護師。本来なら大学に送るべき手術もこなしてしまった。
そんな彼に病院は第二外科医長として赴任させることにした。 患者のことを第一にする、そんな真摯な態度の当麻についてくる者、そして反発する者、病院はだんだん二つに分かれていく。 しかしこの市民病院を大学病院で受けれるような環境にする、市長の大川(柄本明)の強い思いも当麻を呼んだことの表れだった…
 
医療ドラマですが、これは素晴らしかったです。 
1989年といえば、今よりもいろいろな規制がある時代。 この作品にも生体肝移植が大きなハイライトで描かれています。 肝臓を提供するのは若くして事故に遭い脳死状態になった高校生、一歩間違うと殺人とされてしまう手術を決行する当麻医師の姿は崇高でさえありました。 
もちろん敵対する医師もあり、その中で大きなプレッシャーの中行われる大手術、大きな感動と、当時の脳死患者に対する問題点も描かれ、鋭い視点の作品でした。 またラストの展開も良かったですね。 次の代への医学の継承をさらっと描かれ、非常に後味の良い終り方でした。 
各役者さんの配置の素晴らしく、柄本明余貴美子松重豊、彼らが渋く脇を固めていました。 また若き悩める医師役の吉沢悠も良かったですね。 
ドロドロしたり悲しい物語の多い病院物ですが、こんなに崇高で爽やかな作品はほんとに久しぶりでした。

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母・浪子が亡くなり彼女の日記を弘平が読み始めた

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浪子は日々鬱屈していて、毎日日記に愚痴っていた

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そこに現れた一人の医師・当麻。彼は決して妥協しない、そして驚くべく腕を持っていた

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この病院で困難なオペも引き受ける当麻

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幼い息子を抱える武井静


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