疲れ切った体で、朝にアパートに帰ってくる今日子(安藤サクラ)。 彼女はコートを脱ぐとそのまま寝てしまった。
男は修一が今度働く会社の社長だった。 修一に社長は言う。 「一度お母さんのところへ帰るかい?」 でも修一はまず働きたいと言うのだった。
今日子は起きて朝ごはんを作っていると、男が帰ってきた。 トール(和田聰宏)と呼ばれている。 彼は、「今もう3時過ぎだぞ、それで朝ごはんなの?」 何気に和歌みたいな節回しで話す。
そして今日子に金をせがむのだった。 しかしその時、揺れが来た、大きな揺れが。2011年3月11日3時半を回ったところだった。
修一は社長とラーメンを食べているときだった。 ほとんど食べ終わっていたが、そのまま会社に行くと従業員は、テレビを食い入るように見ていた。 紹介をしようとしても津波の映像をみんな食い入るように見ていた。
今日子は揺れが収まると、またトールがお金をくれとしつこく言ってきた。 そこにまた揺れが来た時、戸棚が倒れてきた。 そして、二人も倒れてしまった。 その時もっていた包丁で今日子はトールを刺してしまった。 呆然とする今日子。 トールはもう動かなかった。
修一はなぜ少年院に入っていたのか? 彼は父親を殺してしまったのだった。
今日子はなぜこんな甲斐性が無い男と暮らしていたのか? 彼女は夫と子供と別れて東京に来たのだった。
二人の過去とはどんなものだったのか?…
父を殺し、少年院に入っていた修一は、成績優秀なんですね。 また今日子にしても家庭を捨てるのには彼女なりの理由がありました。 結果的に、二人とも人を殺めてしまうのですが、修一にしても今日子にしてもちょっとしたタイミングや、ボタンのかけ違いがきっかけなんですね。
安藤サクラは園子温監督の「愛のむきだし」 http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/2085361.html で強烈な印象があり、彼女の出ている作品は結構見ています。 この作品では、汚れ役もこなしていますが、一児の母なんですね。
過去を捨てたはずの彼女が、大震災によりわが子を思い出してしまうところが無性に悲しいシーンでした。
一方、修一役の柄本佑はもう今や若き名バイプレーヤーですよね。 でも今回は堂々ダブルメーンキャストでした。 修一は誠実さをしっかりと持っていますから、もう決して過ちを起こさない人間ですね。 そんな役を彼はしっかりとこなしていました。
この作品は震災の設定が無ければ、殺人を起こした二人の人間ドラマですが、震災の設定を取り入れたところから、ちょっと趣が変わった感じがしました。
二人の接点は最後にありますが、言葉を交わすことは無いんですね。 何故か被災地の映像がみずみずしく感じましたね。
今日子とトール、本気で刺そうとは思っていない
トールを殺してしまい途方に暮れる今日子
修一を引き取ってくれる社長
仕事ぶりはまじめな彼だが
修一が知りあう娘
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