2012年作品、クリスティアン・ペツォールト監督、ニーナ・ホス、ロナルト・ツェアフェルト出演。
彼女の顔には笑いはなかった。 医師アンドレ(ロナルト・ツェアフェルト)と秘密警察<シュタージ>の諜報員シュッツ(ライナー・ボック)は、彼女の来るのを2階の部屋から見ていた。 決して時間より早くは来ないはずと、シュッツはアンドレに言った。
同僚に紹介されるバルバラだが、彼女の顔にここでも笑顔はない。 当然同僚たちは彼女にあまりいい感情を抱かなかった。 昼食の時、食堂でも彼女は同僚と席を一緒にせず、窓際の空いている席に行ってしまった。 しかしアンドレだけは彼女に対して、普通に接する態度だった。
初日は彼女はバスで来た。 仕事が終わりバスを待っているバルバラに、アンドレは「バスはなかなか来ないから、家まで送るよ」 と言うと、彼女は素直に乗ってきた。 しかしここでも彼女の顔には笑顔は浮かばなかった。 車に乗ると、アンドレは言われもしないのに、彼女の住んでいる方向へハンドルを切るのだった。 どうして自分の住んでいいる場所を知っているのか? 不審に思ったバルバラは、着く前に車から降りてしまった。
ある日、トルガウの矯正収容施設から逃亡して、髄膜炎を発症した少女ステラ(ヤスナ・フリッツィー・バウアー)を警察が連れてくる。 ステラは何度も脱走している常習犯なので、病院の看護師たちはあまりいい目で見ていなかったが、バルバラだけはステラに優しかった。 症状は重く、自分で本を読むこともできなかった。 バルバラはステラに本を読んであげる。
バルバラは帰る途中森に向かった。 自転車を置いて森の中に入っていく彼女。 そこに高級車が止まった。 そこから降りてくるスーツ姿の男、西ベルリンに住む恋人ヨルク(マルク・ヴァシュケ)だった。 束の間の情事に浸る二人、そしてヨルクは彼女に金を渡す。 そう逃走資金だ。 彼女はそれを海岸に隠し家に帰ると、そこに待っていたのは、シュタージの家宅捜索と女性職員による屈辱的な身体検査だった。 彼女は無事西ベルリンに脱出できるのだろうか?…
今でこそ統一され、大国となったドイツですが、第2次大戦後、不幸にも国は分断され、首都ベルリン自体も、2つに裂かれていた異常な状態が続いていました。
この片田舎の町で、彼女は初めは自分の幸せしか考えていないのですが、そこに医者としての彼女の使命感がにじみ出てくるところから、物語は変化していきます。 西と東の経済格差は大きかったんでしょうね。 そんなシーンやセリフもいっぱい出てきます。 ちょうど今の南北朝鮮がそんな感じなのでしょう。
初めは決して笑顔を見せないバルバラが、最後に見せる笑顔。 これが彼女の選んだ人生の証でした。 ぶつっと切れているようなエンディングでしたが、見た後余韻が残る物語でした。
ドイツは9年後統一されたからまだよかったですけど。 お隣の国はなかなか難しいですね。 いつの日か朝鮮半島も、一つになればとふと思う作品でした。(G)